音楽と自転車があればいい

ブラスバンドとブロンプトンの新しい楽しみ方を探求する日常のブログです。

【どこより詳しいブラスバンド曲紹介】ブラスバンド×ロックの融合。ROCK MUSIC/Goff Richards

私が所属しているブリティッシュブラスバンドBrassBand Fellowsは、春と秋にコンサートを行っています。今回は「ON THE ROCK!」というテーマでさまざまな視点からロックにまつわる曲を演奏します。

<公式HP>

https://sites.google.com/site/brassbandfellows/

今は春の演奏会の練習をしています。今日は、そこで演奏する曲をどこよりも詳しく曲紹介します。

 

ROCK MUSIC/Goff Richards

ブリティッシュブラスバンドでは通称「鼻血ドラゴン」と呼ばれる名演、Britannia Building Society Bandが1992年の欧州選手権で演奏した「ドラゴンの年」のCDは、ブラスバンドファンなら一度は目にしたことがあることでしょう。

 

このCDの「ドラゴンの年」のひとつ前のトラックに入っているのが、ROCK MUSIC IIIです。このCDの効果で(?)ROCK MUSIC IIIは世界中の多くのバンドで演奏される人気曲となりました。

しかし!!ブラスバンドに詳しいひとでもROCK  MUSIC IやIIの存在について考えたことがないのでした。

実はこのROCK MUSIC IIIとは3楽章形式の組曲の終曲なのです。

 

 

作曲者Goff Richardsについて

"コーンウォールに生まれ、王立音楽大学レディング大学に学ぶ。1976年から1989年まで、サルフォード工科大学(Salford College of Technology)にて編曲を講義。また、長年にわたり、チェサム・ビッグバンド(Chetham's Big Band)の音楽監督を務める。1989年にサルフォード大学ジャズ・オーケストラをBBCビッグバンド・オブ・ザ・イヤーに導いた功績により、1990年に同大学より博士号を授与される。(wikipediaより引用)"

ゴフリチャーズはイギリスの作編曲家で、 ブラスバンドをやっていれば一つのコンサート内に必ず彼の曲が入っているほどたくさんの作品を手掛けています。

「ジェームスボンドコレクション」のような、映画音楽をブラスバンドに編曲した作品や、ロシア民謡風のメロディを使い打楽器をフィーチャーした「ラスキーパーカスキー」など演奏しても聞いても楽しい曲が山ほどあります。 

アンサンブル作品の「高貴なる葡萄酒を讃えて」「アラカルト」は、ブリティッシュブラスを知らない方でも、ブラスアンサンブル曲として聞き覚えがあるかと思います。

(アラカルトのブラスバンドver.もあります。)


A LA CARTE


【広島ブラス・シンフォニー】「高貴なる葡萄酒を称えて」より5楽章(V. Fundador and more Champagne)


「高貴なる葡萄酒をたたえて」「アラカルト」/G.リチャーズ

 

「高貴なる~」はワインを題材にしていて、「アラカルト」は世界の食べものを題材にしていて、、、食べもの人気は世界共通なのか…??

曲目解説

【ROCK MUSIC I】

YOUTUBEの音源は見つかりませんでした。

冒頭はハイハットシンバルの16ビートから軽快に始まります。そこから、強奏でのフォルテピアノ・クレッシェンドが連続します。その後、第一の主題であるゴフリチャーズらしいさわやかなメロディがコルネットユーフォニアムに演奏され、快速に曲は進行します。コルネットセクションの速いパッセージのセクションのあとは、再び第一の主題が現れます。再び現れた主題の裏では、細かい打ち込みが追加されており、曲のスピード感を後押しします。

【ROMANTIC  INTERLUDE(ROCK MUSIC II) 】

またまた、YOUTUBEの音源は見つかりませんでした。

 「ロマンティックな間奏曲」と訳されるこの曲は、おそらく日本国内ではまだ演奏されていません。というのも、海外の楽譜購入サイト(JUST MUSICなど)でROCK MUSICを検索しても、この2楽章だけがヒットしないのです。"ROMANTIC INTERLUDE"という副題を知っていないと、ROCK MUSIC組曲の中の一曲とは分からなくなっています。

曲は、第一楽章の主題をもとにした変奏曲となっています。冒頭は、フリューゲルホーンとバリトンのデュオで静かに始まります。次にテンポはさらに緩やかになり、コルネットトロンボーンのデュオで演奏される優しいメロディへと引き継がれます。

曲は、この二つの場面が繰り返される形で進行します。間奏曲というタイトルながら、メロディが繰り返されるにつれて音域が広がり、音の強さも大きくなっていきます。ブラスバンドの迫力を引き出しつつも、優しさを感じさせる中間楽章は、次第にテンポを落として幕を閉じます。

【ROCK MUSIC III】

最終楽章は、一番の人気曲(というか、この楽章しか知られていない?!)であるRock Music IIIです。


"Rock Music III" - Brass Band TSB

冒頭は、第二楽章の終わりから一転、ティンパニの強奏が曲の始まりを提示します。華やかにオープニングが始まり、テナーホーンを中心としたグリッサンドがまさに”ROCK”の雰囲気を醸し出しています。

主に12/16拍子で進行するこの曲は、ロックドラムさながらの打楽器のリズムのなか、各楽器が3連符(楽譜上は8分音符)のリズムを刻み続けることで、BPM168の非常に速いテンポのドライブ感を維持しています。

トロンボーンの刻みのリズムが曲を一度落ち着かせ、次のユーフォニアムから始まるメロディを引き立たせます。その後、低音楽器を中心とした速いパッセージを挟み、コルネットの弱奏へとつながります。この急激に音量が落ちるやまびこのような弱奏こそがブラスバンドの真骨頂とも言えるでしょう。

終盤は、ブラスとドラムソロが交互に現れるシーンの後、快速で進んでいた曲が急にストップします。そして、ゆったりとしたリズムでこの曲の主題が演奏され、ドラムの長いフィルインとともに賑やかに曲を終えます。

 

3楽章全曲でおよそ15分。金管奏者にとっては、パワフルに演奏する部分、優しく奏でる部分、きれいなハーモニーを作る部分が共存しているために、非常にスタミナを要する曲でもあります。全曲通しで演奏するのは国内初??チームワークをアピールする演奏にしたいと思います!

にほんブログ村 音楽ブログ 大人の音楽活動へ
にほんブログ村